アロマテラピーという言葉自体が確立したのは今世紀に入ってからのことですが、芳香植物や抽出された精油はそれよりずっと以前、原始の時代から人々に親しまれ、様々な方法で暮らしに役立てられていました。
エジプトでは西暦前3000年以上の昔から、芳香植物を医療や化粧、宗教儀式の目的で使用していましたし、また死者をミイラにする際にも投薬や樹脂を防腐の目的として役立てていたこともわかっています。最も多く使用されていた精油のひとつにシダーウッドがあります。これはシダーウッドが永久不滅のものと信じられていたからです。
ギリシャでは、エジプトから多くの医学的知識を受け継ぐとともに、植物医学をよりいっそう洗練させ、確立させました。芳香浴やマッサージなども治療目的として行われるようになったといわれています。
一方、アジアでは香りの文化は存在しなかったのでしょうか?実はインドや中国でもかなり古くから、芳香植物をマッサージなどに利用していたと考えられています。古代インドのアーユルヴェーダの医学書には、精油を使用した治療の記述がみられます。
こうしてアロマテラピーのルーツとなる、これらの療法は各国で発達していき、17世紀のイギリスでは、疫病の予防に芳香物質がある程度有効だと広く知られるようになったことから、ハーブ医学は全盛期を迎えました。しかし、19世紀に入ると科学の進歩に伴って、しだいに精油に代わって人工の化学物質が用いられるようになっていきました。
再び精油が見直されるようになったのは、20世紀になってからのことです。精油の研究を続けていた、フランスの化学者ルネ・ガットフォセがアロマテラピーの実践を発表し、<アロマテラピー>の名をこの世に送り出したのです。
このように長い歴史を歩んできたアロマテラピーはストレスの多い現代社会において、心身を癒してくれるヒーリングの代表的なものとして、よりいっそう注目されるようになりました。このようにアロマテラピーが現在もなお、世界各国で普及しつつある背景にはストレスの増大のほか、地球環境や自然志向への関心の高まりといえるでしょう。
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